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リバネスの人

海の深い魅力を探究するひと

滝野 翔大(たきの しょうた)
修士(農学)
専門分野:海洋生態学、同位体生態学

地道な活動は、時を経てその価値が示されることがある。滝野翔大(たきの しょうた)さんは、創業して間もないリバネスが実施した実験教室の参加者だ。その経験がその後の人生に大きく影響し、今や、彼の見つめる先は地球全体に及んでいる。今回は、そんな滝野さんに話を聞いてみた。

(聴き手:津久井 雅美)

津久井:たしか、中学生のときにリバネスの実験教室に参加したことがあるんですよね?

滝野:はい。2006年、中学3年生の夏に、母校の聖光学院(神奈川)で「聖光塾」という特別授業があったのですが、そこでリバネスの実験教室を受講しました。実は、小学生のときにも、聖光学院のオープンキャンパスである「聖光祭」で、リバネスのサイエンスショーに参加していたんですよ。

津久井:もともと、小さい時から理科や実験が好きだったんですか?

滝野:いいえ、中学3年生の頃は法学部に行って検察官になろうとか、工学部に行ってロボット系にいこうなどと思っていました。生物系には絶対行かないと思っていましたね。
実験は好きでしたが、実はそれまで、生物は暗記科目だと思っていたので好きではなかったんです。

津久井:生物学が好きになったきっかけは何だったのでしょうか?

滝野:聖光塾には様々なプログラムがあって、それを自分で選択する形で参加しますが、自分は実験がやりたいと思っていました。
チラシには「DNA鑑定実験」と書いてあって、「本当に中学生でもできるのだろうか」と疑いながらも参加することにしたんです。実験教室では、ブロッコリーとカリフラワーの遺伝子の違いについて実験を行いました。「こんな本格的なことができるんだ」と、とても感動しました。
リバネスの実験教室がきっかけで、「生物は暗記科目じゃないんだ」ということに気づいたんです。わからないことを追求する。その知識が積み重なった学問が生物学であるということを知ったのです。

津久井:滝野さんは、その後、海を舞台に研究するようになりましたよね。

滝野:はい。高校生のときに、テレビで海洋研究に関する番組を見たのがきっかけです。「これは、おもしろい!海ってすごいな。」と思ってしまったんですよね。一方で、当時は地球温暖化とかエネルギー問題などが叫ばれていましたから、「環境」にも興味がありました。
当時高校生の自分にはよく分からないことでしたが、「きっと大変なことなのだろうな。何か私にできることはないのかな。」と思っていました。とりあえず、「海」「環境」「生き物」。これらをキーワードにして深めていこうと考え、東京農工大学に進学しました。

津久井:3つのキーワードを深めるというのは、漠然としたテーマに思えますが、滝野さんはどのような活動から始めたのでしょうか。

滝野:学部生のときは生物系の領域に進みたかったのですが、たまたま生物系の研究室が空いてなくて。「地球惑星学」という地球の現状について調べる分野の研究室に所属して、そこで「海をやりたい!」と言って始めました。まずは、主に大阪湾の窒素循環について調査を開始。窒素循環にはプランクトンが関わっているということが知られていたので、プランクトンの研究を始めたんです。
その後、大学院へと進学しようと考え始めた頃、所属していた研究室がなくなるということで、東京大学農学部に移ることにしました。「植物プランクトンだけでなく、海の栄養塩とプランクトン全般を調べよう。」という指導教官からの提案もあり、とりあえず、それをやってみることにしたんです。

津久井:大型船に乗って行う研究ってどんなものなのでしょうか?

滝野:外洋でのサンプリングのため、全長100mの『白鳳丸(はくほうまる)』という船で、太平洋を横断したり、バンクーバーから南下してカリフォルニア沖に出て、ハワイを通って、中国沖まで西へ西へと進んで日本へ戻ってきたり、黒潮を縦断したこともありました。御前崎からひたすら南下するんです。

津久井:航海の期間はどのくらいですか?

滝野:2〜3週間の航海を年間6回ぐらい。2ヶ月半くらいの長い航海に出たこともありました。

津久井:聞いただけでも、大変そうですね。

滝野:はい。特に台風のときは大変でした。船は大きく揺れるし、海が荒れて観測もできず、台風が去ってから、遅れた分の観測が回ってきて、寝れない日が続くこともありました。
あと、自分しか使わない装置が壊れたりしたときも苦労しましたね。他のひとに聞いても分からないので、手持ちの道具で、自分一人で修理や対応をするしかないんです。

津久井:かなり過酷ですが、なぜそこまでして研究するんですか?

滝野:海の上は好きです。海の上で何もすることがなくて、自分以外の研究者から違った研究の話が聞けるのも、とても楽しかったですしね。

津久井:修士を修了して、博士課程に進学する道もあったと思うのですが。

滝野:実際、卒業後の進路は迷っていました。博士課程にいくべきか。あるいは、当時学芸員の資格も取ったので、博物館で働くことも考えました。一方で、テレビの特番などでたまに取り上げられるくらいの、海の深い面白さを伝えたいという思いもあったので、ただ単に研究する、博物館で展示物の説明をするのではなく、研究や展示物の価値をしっかりと社会に伝えていきたいという気持ちもありました。研究の発見や成果を、狭い研究の世界だけに閉ざしてしまうのは嫌だったんです。
まずは、社会人になって社会を知ろう。未練があるようだったら、また研究をやればいいし。普通に就活をして、内定ももらったんです。そんな中、2ヶ月間の太平洋横断航海に出ました。もちろん内定先の会社には事前に伝えてありましたが、連絡がつかないという理由で、内定取り消されるという事態がおこったんです。それがきっかけで、「通年採用、科学、研究、教育」というキーワードで改めてインターネットで就職先を検索することになりました。
そこで、自分が生物系に進んだきっかけになった「リバネス」を発見したんです。科学教育のイメージしかなかったけど、よくWebサイトを見てみたら、色々なことをやっていることを知って、興味を持ちました。

津久井:リバネスに入社して、実験教室を運営する側になってみてどうでしたか?

滝野:昔の自分は、科学は好きだけど、暗記ばかりの(と勘違いしていた)生物学は嫌いでした。それが、実験教室を受けて生物学のイメージが変わり、自分の進路にも大きな影響がありました。生徒さんたちにも、自分たちが組み上げた実験教室に参加して、「この分野面白いな」と感じてもらいたい。受講した生徒さんのその後の人生を選択するきっかけになってくれれば、というのを意識しながら実験教室を企画しています。
それに、受講した生徒さんが、将来、私たちの仲間になってもらえたらなとも思っています。

津久井:最近の実験教室は、以前のものと比べて違いがありますか?

滝野:最近は、リバネスに様々な分野のメンバーが加わったことで、新しいテーマでの実験教室を開発したいという話がたくさん出てきています。それは、実験教室を希望する学校や先生方、生徒さんにも選択肢を増やすことになるので、とても良いことだと考えています。
ただ、実験教室を企画するうえで重要なのは、どんなメッセージを伝えたいか、面白さはどこにあるのかを明確にすることだとも思います。自分の専門分野にこだわり過ぎずに、それぞれの観点からメッセージや面白さ、その分野の魅力を伝えることができる。それこそが、リバネスのメンバーに求められることなのだと思っています。実験教室を通して、「身近なところからの発見にワクワクする機会」をもっとたくさんつくりたいですね。

津久井:静岡雙葉高校の企画では講師(ティーチングマネージャ:TM)をやっていましたね?

滝野:はい。高校の近くにある駿府城のお堀をフィールドにして、プランクトンの研究体験を実施しました。生物、環境(地学)、化学、社会的背景など、融合した分野として、多様な視点でものを考える教室だったのですが、結構好評でした。普段見ていた風景が、研究対象になるという発見を与える機会となり、実際にプランクトンの研究で「マリンチャレンジプログラム」にエントリーした生徒さんもいました。

津久井:教育に熱心な印象がありますが、今後も教育を中心に活動をしていくのでしょうか?

滝野:そうですねぇ。私は、「海」の仲間を増やしたいと思っているので、教育だけでなくてもよいと考えています。まだ、未知のことだらけの海の研究を、次世代に伝えていくことで、海に興味を持つ仲間が増えるかもしれないし、教育だけではなく、分野融合的な研究においても、仲間を増やすことができると考えています。
たとえば、船上での海水の採水(サンプリング)はバケツで重い水を引き上げる作業でした。大変な重労働でしたが、工学分野の技術者は簡単にその課題を解決できるかもしれません。海の研究者がその魅力を他分野の研究者に伝え、興味をもってもらい、合わせて課題を伝えられれば、コラボレーションの可能性が見えてきます。

津久井:最後になりますが、海って、我々人類にとってはどんな存在なのでしょうか?

滝野:「人類にとって・・・」という風に、我々はどうしても自分を中心に考えがちですが、地球にとっては表面の7割も締める海の方を中心に考えるべきかもしれません。海が変化すれば、我々なんて一瞬で消えてしまうような存在とも言えます。私たちは海と上手に付き合っていかなければいけないでしょう。
その割に、我々人類は海について知らなすぎる。もっと海を理解していくべきではないでしょうか。海にしてみれば、もともと大した存在ではなかった人類が、今や、汚染などで海そのものを変えてしまう力を持ちつつあるんです。そのことを我々人類は、改めて、認識しないといけないのではないでしょうか。

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