インタビュー

多様性の価値を最大化するひと

秋永 名美(あきなが なみ)
修士(サステイナビリティ学)
専門分野:サステナビリティ・サイエンス

入社当初からグローバルチームに参加し、リバネスではマレーシア支社を任されている。2016年には日本ユネスコ国内委員会委員に就任するなど、秋永 名美(あきなが なみ)さんは国際的に活躍するひとだ。今回はそんな秋永さんを捕まえてインタビューをしてみた。

(聴き手:佐野 卓郎)

佐野:ずばり、秋永さんがやりたいことってなんですか?

秋永:私の現在のテーマは、「多様性の価値を最大化する」というものです。ものごとには何かしら多様性があって、それは決して無理矢理に生み出されるものではありません。たとえば世代の違い、文化の違い、組織の違い、バイオ・ダイバーシティなどです。研究だって分野の違いがありますよね。こうした多様なものごとを、共通のビジョンに向けて組み合わせていくことで、新しい価値や課題解決の道筋を見出していきたいんです。

佐野:いつ頃からそう思い始めたのでしょう?

秋永:この「多様性」という言葉を意識して使うようになったのは、入社して1年半くらいのときでしたが、振り返って考えてみると、学生時代から私のテーマはこの「多様性」だったように思います。大学院に入り研究するようになって、それをより強く感じるようになりました。

佐野:確か、秋永さんの研究分野は「サステナビリティ学」だったと思うんですが、それってどんな学問ですか?

秋永:世の中のあらゆる持続可能性について研究する学問領域です。サステナビリティ・サイエンスって言うんですけどね。多様な課題に対して、色々な知識とか人を組み合わせて新しい価値と解決策を創出する学際的な領域ですね。

佐野:具体的にはどんな研究をしていたんですか?

秋永:私は、東日本大震災後の釜石で、復興と地域の発展に対する課題について調べていました。地域ではどこもそうですが、少子高齢化が進み、産業自体も下火になる傾向があります。そこにきて、震災による大きな被害が重なったわけですから、課題は多様に山積していました。

佐野:調査してみて、どんなことがわかりましたか?

秋永:釜石には海辺の集落が多いんですが、そこには地域の歴史をよく知る長老のような方がいます。どの方も地域のことをよく考えていて、地域にも愛着があって。そんな長老たちが震災の後の村の運営について意見を出すと、思いもあれば力もあって、周りに意見が通りやすいんです。でもそれは裏を返すと、主観的な意見が多いという実情もあります。その意見で果たして、震災前からの課題は解決するのか。そこに私は、未来を担う若手の人の意見をもっと取り入れるべきだと考えました。

佐野:なるほど。そのように論文にもまとめたんですね。

秋永:はい。でも同時に、論文なんか書いても現場は何もかわらないんじゃないかって思ったんです。そんなときに大学院の友人を通じてリバネスを知りました。「リバネスならアカデミアと現場をつないで、様々な課題を解決できるかもしれない」って考えました。

佐野:確か修士を卒業する少し前、12月頃の話ですよね。就職の内定とか決まってたんじゃないですか?

秋永:内定が出ているところもありましたよ。学生時代、色々な業界を見ることがありました。IT系企業で色々と学ばせて頂いたこともありました。でも地域をフィールドにして研究して思ったのは、ITだけじゃ世界は変えられない。もっと地道に泥臭く地域に入り込んでいく仕事をしなければと思ったんです。

佐野:リバネスで最初にやった仕事ってなんですか?

秋永:色々と関わらせていただきましたが、一つ挙げるとしたらやっぱり「東北バイオ教育プロジェクト」ですね。東北復興支援の一環で、協和発酵キリン社と共に行っていたプロジェクトで、東北の高校生の研究活動を支援するプロジェクトです。そこで私はミミズの研究をする高校生を担当したんです。
とても楽しかった!何といっても、プロジェクトのコンセプトが私にぴったりだったんです。高校生それぞれの研究テーマは、科学技術を活用して地域の課題を解決しようとするものでした。
私は、ミミズの専門家ではなかったので、解剖の仕方や最先端の知識を学び、教育現場に伝え、一緒に研究して地域に発信して・・・それがとても嬉しかったんです。

佐野:最近は、海外での取り組みに注力していますよね。

秋永:入社当初からグローバルチームに加わって、シンガポール支社の徳江さんにも誘って頂きながらマレーシア支社の立ち上げなども経験させてもらっていました。入社して3年目に国際開発事業部に異動し、特にアジアでの活動に注力しています。

佐野:「地域」という意味で、海外と日本ではなにか違いがあるんでしょうか?

秋永:違いは特には感じませんね。同じ研究活動を続けている感じです。ただ、そこには多様性があります。

佐野:国が違うと多様性のあり方も違いますか?

秋永:違うと思います。アジアでは国や社会へのアプローチの仕方が違うんです。たとえば、シンガポールは画一的で小さな国ですが、世界中から多様なタレント(人材)を集めています。国が大きく、文化や生物などの多様性があるマレーシアは、アジアを引っ張っていこうとする力を強く感じます。

佐野:そういうのって、やっぱり現地に行かないと分からないものですか?

秋永:現地に行って人と会って、一緒にご飯を食べて、街を見るんです。大学や企業、省庁を訪問するときは必ずトップと会う。そんな中でようやく分かってくる気がします。

佐野:時間をかける必要がありそうですね?

秋永:時間というよりもですね。多くの人に出会うその時に、自分のミッションが明確になっていることが重要なんです。じゃないと、どんな良い人に会ったって何も起こらないと思います。逆に、ミッションと情熱を持ったタイミングで多くの人に出会うと、色々なことが起こっていく。メンバーが集まったり、現地のパートナーが増えたりするものだと思います。

佐野:今後はどんなことを仕掛けていきたいですか?

秋永:今思うと、私は、リバネスが全く知られていないエリアで、リバネスの様々な活動を展開してきました。東北での活動、サイエンスキャッスルの東北大会の立ち上げ、マレーシア・タイ・インドネシアでの様々なプロジェクトの立ち上げ。そういう仕事が自分には向いてる気がしています。究極的にはリバネスが実践する様々な仕組みを、世界に広げていきたいと考えています。特にアジアにおいてですね。

佐野:アジアに随分と注目していますね。

秋永:アジアは今、エネルギーに溢れていますからね。それにアジアの国々で生まれた考え方や解決策は、近隣諸国に活かせるため、活動を広げやすいというのもありますね。
それと実は、私は大学院のときの友人がアジアをはじめ60以上の国々にいるんです。そんな友人の研究者のもとを訪れながら、ぜひ一緒にプロジェクトを興していきたいなと思っています。

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