インタビュー

リバネスマイル2026 花里 美紗穂 博士(理学) 「感動」の種を蒔く:記憶に刻まれる教育の価値

イラストを描くのが得意な花里美紗穂さん。12年間で様々な教材開発や実験教室を行ってきました。免疫研究を経て、たくさんの子どもたちと向き合ってきた、リバネスでの12年とは。

研究室から「伝える」世界へ

大学院時代は特に「M細胞」という特殊な細胞の研究に情熱を注いでいました。M細胞は、腸管内の細菌を積極的に取り込み、奥にいる免疫細胞へ情報を伝える「ゲートウェイ」のような役割を果たしています。私はこの仕組みを利用して、いかに効率よくM細胞にワクチンを届け、病原菌から体を守る「抗体」を作らせるかという研究に心血を注いでいました。この体のなかで起きている目に見えない世界で起きている精緻なメカニズムが、私の探究心の原点です。研究に没頭する日々の中、転機となったのは大学院時代に所属していた横浜理化学研究所の一般公開イベントでした。自作のイラストを使い、子供たちに腸内細菌の話をしていた時、「自分の体の中にこんな世界があるんだ!」と、目の前の子供たちの表情がパッと輝き、感動した瞬間を目の当たりにしたのです。その時、「研究者は、目に見えない世界を伝えることで、目の前に新しい世界を広げることができるんだ」と確信しました。そこから私の関心は、研究そのものから「サイエンスを橋渡しする(サイエンス・ブリッジ)」ことへと広がり、キャリアセンターにおいてあったリバネスの研究キャリア雑誌『incu・be』をきかっけにリバネスの門を叩きました。インターンからはじめ、サイエンスブリッジコミュニケーター育成講座を経て、「どうしてもこの人たちと共に働きたい」という熱意をぶつけ、入社しました。

人と人の出会いが起こす「180度の変化」

私が考える実験教室は、単に科学的な手法を教える場ではありません。「人と人とが出会い、感動が起きる場」です。例えば、自分の口の中の細胞からDNAを取り出す実験では、ただ手順を追うのではなく、こんな言葉を添えます。「これがあなたの設計図だよ。ATGCという文字が書かれていて、一つでも違えば別の生き物になっていたかもしれない。先祖代々引き継がれてきた、かけがえのないものなんだ」と。ある実験教室では、それまで無関心だった生徒が、これらの言葉とともに本物のDNAを見た途端、前のめりになりました。次の日には、自ら家から塩を持ってきて実験を工夫し始めるほど、180度態度を変えたのです。子供 たちに本物の体験とともに何という言葉をかけるかによって 世界が変わっていくという瞬間にものすごく可能性を感じました 。 人を介して生まれた「感動」が、人を動かす大きな力になることを私は実感しています。

記憶と時間を紡ぐ次の12年

リバネスでキャリアを重ねる中で、私生活で大きな出来事がありました。父が若年性アルツハイマーを患い、記憶が失われていく過程をそばで見守った経験です。一定の速度で回り続けるアナログ時計を見つめながら、私は思いました。「時間は誰にでも平等に流れるけれど、その積み重ねで人はこれほどまでに変わってしまう。だからこそ、今この瞬間の記憶を刻むことがいかに大切か」と。リバネスでの12年を経て、私は次の12年を目一杯秒針を動かして、「人々の記憶に残る感動を作っていく時間」にしたいと考えています。これからも実験教室という場を通じて、子供たちの、そして社会の記憶に残る瞬間を創り出し続けていきます。
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1. 腸内細菌(M細胞)

2. サイエンスブリッジリーダー

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リバネスマイルとは?