インタビュー

企業を巻き込みサステナブルな社会を目指すひと

井上 麻衣(いのうえ まい)
博士(国際協力学)
専門分野:社会システム学

サステナビリティに関する研究は、派手な発明や生命現象の発見などとは異なり、多くの人々に「気付き」を与えるようなものと言える。そんな融合領域で研究する井上 麻衣(いのうえ まい)さんは、今年リバネスに入社したばかりだ。ビジョンに向けて決して飛躍せず、地道に積み上げるようなアプローチを取る井上さんは、今、リバネスに来て何をしようとしているのか。話を聞いてみた。

(聴き手:佐野 卓郎)

佐野:井上さんはサステナビリティに関する研究をしていたと聞きましたが、「サステナビリティ」にいつ頃興味をもったのでしょうか?

井上:以前、私は情報通信の分野で研究をしていました。とても楽しかったのですが、あるとき「この研究で私は何がしたいのか」と自分に問うようになりました。自分がやりたいことと少し違うような気がしたんです。現代は、変化が激しく、社会課題はグローバル化し複雑化している中で、何かひとつを解決すれば済むというわけではなくなっています。
局所的にひとつのテーマを研究するよりも、もっと大きな課題に取り組んでみたい。私はもともと環境問題に関心がありましたから、サステナビリティ学の領域に足を踏み入れることにしました。2005年のことです。

佐野:「環境問題」と聞くと、自然破壊とか温暖化みたいなものを考えがちですよね?

井上:そうですね。そして人間の営みがどのように環境に影響を及ぼすのかという点も重要です。自然界だけでなく人や社会、経済などの視点も併せて考えていく必要があるわけです。
私は当初、持続可能な発展ができる社会を実現するためには、中立的な立場で取り組むことがよいと考えていて、だからこそ大学で研究すべきだと考えていました。でもアカデミアだけでは何も変わらない。変わるためには、企業側の立場にも入り込むべきだと思いました。

佐野:それで、リバネスに来たんですね。

井上:はい。アカデミアと産業界を結ぶ接点がここにはあって、技術と未来の社会をつぐような仕事ができる。そう思ってリバネスに来ました。

佐野:リバネスはどこで知ったんですか?

井上:以前所属していた研究所に、企業に出向いて実際に働いてみるというOJT研修制度がありました。研究所から渡されたリストにリバネスの名前があったので調べてみたんです。Webには「研究者集団」とか書いてあって、「この会社、なんだろう?本当にこんな事業が成り立つんだろうか?」と疑問に思いつつ、リバネスに就職をしていた先輩の岡崎さんに話を聞いてみたのが、リバネスとの出会いです。その後、まずは2ヶ月間のOJT研修でリバネスに参加することにしました。

佐野:リバネスに来てみてどうでした?

井上:ホームページを見て「Passion」なんて書いてあるし、熱くてギラギラした人ばっかりだったらどうしようと思っていました。果たして私に合うんだろうかと。でも参加してみたら、そんなことなくて安心しました。着実に、地味にやってきた会社なんだと知りました。

佐野:リバネスに入社して、一番最初にやったことはなんですか?

井上:入社後の2017年6月にリバネスで初めて開催される、「キャリアディスカバリーフォーラム」に参画させていただきました。

佐野:キャリアディスカバリーフォーラムは研究者向けのキャリアイベントですね。参画してみてどうでしたか?

井上:初めての開催でしたから、まだまだ改善の余地があると思いました。それに「何か仕掛けられそうな場だな」と可能性も感じました。2018年に実施予定の第2回では、研修の要素なんかを入れてみようかとも考えています。

佐野:キャリアイベントとなると、井上さんの当初のビジョンと少しずれているような気がしますが。

井上: サステナブルな社会においては、広い視野をもつ人材が必要になります。そうした人を育むこと、その仕組みを考えていくことは、私のビジョンの根本に位置付けています。広い視野をもった人材とは、具体的にはどのような人なのか、そうした人を育むにはどうしたらよいのか、まだまだ時間をかけて考えないと分からないことも多いんですけどね。

佐野:今後、どのような取り組みをしていきたいですか?

井上:私はまだ入社して間もないですが、産業界に軸足を置いてみた現在、多くの企業の方とお会いする中で、そこにいる方々をどのように巻き込んでいけばよいか考え続けています。サステナブルという視点は今後企業にとって重要なものであると理解はして頂けると思いますが、具体化していくためにはもう一捻り必要なんです。

佐野:サステナブルな社会を実現するために必要なことって何ですか?

井上:企業が活動をし、私たち人間が様々に営むこの社会において、ゴミや廃棄物が無闇に増えていくのは良くないことでしょう。一方で、気候変動問題などに対して、排出される二酸化炭素量を削減する必要性が唱えられています。
こうした課題に対して企業や一般生活者に対策を強要すれば、負担となって継続が難しくなる。現状を否定し、改善策を打って変えるようなやり方ではなく、現状を理解したうえで、上手く付き合う方法を考えていくことにサステナブルにつながるヒントがあると考えています。

入社して間もない井上さんは、現在多くの企業に訪問している。まずは私自身が、企業の活動をひとつひとつ理解をしなければ、実装ができるサステナブルな仕組みは編み出せないと考えているからだ。また、「サステナビリティ」について考えるワークショップ形式の教育プログラムも開発中である。井上さんの研究は、まだ始まったばかりだ。

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