インタビュー

自分が感じた「面白い」を貫いて生きるひと

リバネスの価値は「社会実装のシステムを創る」と「人の育成」の両輪をやっていることにある——。入社6年目となる地域開発事業部 西村知也は、これまでの経験を振り返ってそう話す。東京大学で過ごした学生時代には「人生をかけてやりたいこと」が見つからずに模索していたという西村は、どのようにしてリバネスに出会い、どのような理由で自らのキャリアをリバネスにかける決断をしたのか。その経緯を等身大の言葉で語ってもらった。

西村 知也(Nishimura Tomoya)
株式会社リバネス 地域開発事業部 修士(工学) 東京大学大学院 工学系研究科 応用化学専攻で学位取得。研究のキーワード:酵素・一分子生物物理・Directed Evolutionなど。学生自身がやりたい研究を見つけ、それを続けていける環境づくりを目指して2019年11月よりリバネスに入社。正解のあること・求められることに答(/応)えてきた人生から一転、自分がしたいことに振り切って動くことに奮闘中。殻を破る!

「いい子ちゃん」で生きてきた。それでいいと思っていた

東京大学出身の西村さんは、よく社内で「エリート」といじられていますよね(笑)。やはり少年時代から優秀だったのでしょうか?

実際は別にエリートではないんですけどね(笑)。ただ、自分で言うのも恥ずかしいのですが、子どもの頃に「いい子ちゃん」だったのは確かです。それを最初に自覚したのは、小学校5年生の時。県の学力テストで、算数で100点を取ったんです。そのときにテストで正解を出すことに対して、クイズを解くような楽しさを覚えました。

中学に進学してからも、「勉強が好き」というよりは「良い成績を取る」というのがモチベーションの大半を占めていましたね。嫌味に聞こえてしまうかもしれないですが、それなりに頑張れば、良い成績が取れてしまっていました。周りは基本的に認めてくれている感覚はありましたし、それでいいと思っていたんです。

そのままスムーズに東大に……?

いや、一浪です。高校は地方のいわゆる「自称進学校」で、成績が良い人は先生に「お前は東大を目指せ」と言われる風潮がありました。それを真に受けて自分も「日本でいちばんの大学を目指すぞ」と受験したのですが、最初は惨敗で。高校3年の夏まで部活動を一生懸命やっていたので、「まあ仕方ないかな」と受け止めつつ、でもやっぱり悔しいな、と……。そこから「なにくそ」と踏ん張って一年後に晴れて合格できたことは大きな自信になりましたね。

ちなみに部活動は何をやっていたのですか?

中学、高校とずっと陸上です。専門は中長距離でした。中長距離は勉強と似ているところがあって、コツコツ努力を重ねるときちんとタイムに反映されます。自分は才能とか素質に恵まれているタイプでは決してなくて、コツコツ努力するのが得意なタイプなんだと思います。その感覚は今も変わらないですね。

この人の普通じゃない熱量は一体何なんだ!

東大生としての西村さんは、どんな学生だったのでしょうか? 

今から振り返ると、いい子ちゃん的な発想から抜け出せない学生でした。受験勉強と同じで、「これをやればいい」とか「目の前のこの壁を乗り越えればいい」ということはできるけど、「自分が本当にやりたいこと」は見つけられないというか。そのままずるずると進級したのですが、「このままではダメかもしれない」ということを突きつけられたのが院試でした。実は、院試も一度落ちているんです。内部進学は受かりやすいだろう、と甘く見て勉強に力が入らなかったのが原因です。

再び挫折を経験したことで、心境に大きな変化が生まれた……?

挫折そのものよりも、院試に再挑戦するタイミングで「このままでいいんだっけ?」となったんです。まずは落ちたことに対する悔しさがあったし、研究室の雰囲気は好きだったので残りたいという気持ちもありました。ただ、わざわざ院浪人してまで大学院に入る目的は何なのだろう、という問いに対する答えがいくら考えても見つからなかった。つまり、結局のところ「なんとなく」で院試に再トライしたんです。幸い試験には合格しましたが、「自分は絶対にこれがやりたい」という目標は見つからないままでした。

では、何が転機になったのでしょうか?

それがリバネスのグループCEOである丸さんの講義でした。本当に偶然なのですが、所属していた研究室の教授が丸さんに毎年講義を依頼していて、結果的に自分は学部4年、修士1年、修士2年と学生時代に3回もその講義を受けています。正直に言うと、講義の内容を明確に記憶しているわけではありません……(笑)。ただ、「この人の普通じゃない熱量は一体何なんだ」という強烈な印象をずっと受けていたのは確かです。

それでいよいよ就職活動が現実的になってきた修士2年のタイミングで、丸さんが話していた「企業の研究職ではなくとも、リバネスなら研究に関わりながら社会に貢献する生き方ができる」という考え方に「自分が進むべき方向はこれだ!」と強く感じて、リバネスにコンタクトを取りました。

ずっとやりたいことが見つからなかった西村さんを突き動かしたのは何だったのでしょうか?

目標がずっと持てなかった一方で、世間的なレールや周りの雰囲気に流されて生きるのは嫌だ、という感覚は明確にあったんです。例えば大学では「楽に単位が取れる授業」みたいな情報が回ってくるじゃないですか。自分はそういうことには興味がなくて、自分の専門とは違う分野の講義でも、面白そうだと感じたら薬学でも農学でも何でも受講していました。同様に、修士になってから周囲が話していた就職活動の話題にはあまり興味が持てなかったのですが、丸さんの話を聞いたときには「うわ、面白い!」「この考え方は新しい!」と強烈に感じました。だったら自分の直感に素直に従おう、と。自分が面白いと感じたことなら、人生の選択として納得できるな、と思ったのが最終的なきっかけになりました。

リバネスにコンタクトをとって、まずは何を経験したのですか?

「ちょうどこれから始まるところだから」と紹介を受けて、中高生の研究に対してアドバイスや内容についてのディスカッションを行う研究コーチに参加することになりました。

当時は「研究は大学でやるもの」と思っていたので、中高生が研究をしていること自体にとても驚きました。また、自分はまだ大学院生でしたし、研究者としてまだまだ未熟だと感じていたのですが、コーチをした高校生が「もっと研究を続けたくて、〇〇大学に進学したいと思うのですが、どう思いますか?」と相談してくれたことがあって。自分を頼りにしてくれていることが本当に嬉しかったですし、未熟な自分でも「研究者の先輩」として果たせる役割があるんだ、と気づくことができました。その後もしばらくリバネスでインターンを続けて、結果的に2019年11月に入社しました。

「誰も正解はわからない。西村が決めるしかないんだよ」

現在はリバネスで、どのようなプロジェクトを担当していますか?

「若手研究者のための研究キャリア発見マガジン」であるincu・beの編集長や、研究成果の社会実装を目指す地域テックプランターの茨城・熊本・石川を担当しています。あとは、中高生の、海に関する研究の初期を支援するマリンチャレンジプログラムなどの教育のプロジェクトも、入社以降継続してやっていますね。

リバネスに入社して、印象的だったことはありますか?

最初は「正解がない」ことに戸惑いました。リバネスは常に新しいことに取り組む会社ですし、自分も新しいことを生み出せる人間になりたいと思って入社したわけですが、正解がない場に飛び込んでどうにかして答えを創りだす、というプロセスを楽しめるようになるまでには時間がかかりましたね。正解がイメージできることはやれるけど、イメージがつかないものにはどうしても腰が引けてしまうというか。

そこから成長できたきっかけは何だったのでしょうか? 

中高生にサイエンスのふしぎを届ける『出前実験教室』でPL(プロジェクトリーダー)を担当したときです。そのときの出前実験教室は、新型コロナ禍ということもありオンライン開催だったのですが、当時はリバネスとしてもオンライン開催での最適な方法を試行錯誤をしている段階でした。チームメンバーと綿密に準備を進めていましたが、当日は予定よりもかなり時間が遅れてしまって。そのままでは予定していた終了時間を超過する可能性があり、PLとしてどう対応すべきかを迫られましたが、何が正解なのかがわからなくて、明確な判断ができなかったんです。

出前実験教室自体は、チームメンバーの助けもあって無事に終えることができました。しかし、その後の振り返りで、「オンライン開催の出前実験教室は、リバネスとしても初めて取り組んでいることなんだから、誰も正解はわからない。PLの西村が決めるしかないんだよ」と先輩に指摘されて。ああ、やっぱり自分は「どこかに正解がある」という考え方から抜け出せていないんだな、ということに改めて気付かされました。

それからは、スタンスがガラリと変わった気がします。「新しいことを生み出すためには、自分がこれだと思ったことを決めていくしかないんだ」という考え方ができるようになった。そうやって小さな成功を少しずつ積み重ねることで「自分にもできる」という感覚がついてきて、正解がないことを楽しめるようになりました。

今後、リバネスでどのような挑戦をしていきたいですか?

具体的に何をやりたいかはまだ模索中ですが、リバネスが社会に対してどんな価値を提供しているのか、ということについては自分なりに言語化できるようになってきました。

まず言えるのは、新しい研究成果や技術によって、これまで人類ができなかったことを可能にするための「システム」を創っている、ということです。研究も技術も、ただ存在するだけでは世界は変わりません。それがきちんと社会に実装されるところまで持っていけるのがリバネスの価値だと思います。

ただ、そういうシステムがあるだけでも、世界は変わりません。そのシステムの中に入って、実際にそれを動かす「人」がいなければ物事は進まないからです。リバネスのもう一つの価値は、その「人」の育成に関わっていることにあります。「社会実装のシステムを創る」と「人の育成」の両輪をやるからこそ、リバネスがビジョンに掲げる『科学技術の発展と地球貢献を実現する』に近づいていくことができる。この大きな挑戦を前進させるようなプロジェクトを、自分でも生み出していきたいと思っています。

リバネスは通年で修士・博士の採用活動を行っています。 詳しくは採用ページをご確認ください。