インタビュー

リバネスは地球貢献を実現するリサーチ・インスティテュートだ!

株式会社リバネス 代表取締役社長 COO 髙橋 修一郎(たかはし しゅういちろう)
東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了、博士(生命科学)。リバネスの設立メンバー。リバネスの研究所を立ち上げ、研究支援・研究開発事業の基盤を構築した。これまでに「リバネス研究費」や未活用研究アイデアのプラットフォーム「L-RAD」など、独自のビジネスモデルを考案し、産業界・アカデミア・教育界を巻き込んだ事業を数多く主導している。2010年より代表取締役社長COO。

異分野の知識をつなぐ「サイエンスブリッジコミュニケーター」としての研究者

– リバネスは創業当初から「博士・修士のみの研究者集団」です。まず最初に、リバネスが研究者を採用している理由を聞かせてください。

髙橋 なぜなら、リバネスはリサーチ・インスティテュートだからです。そもそもリバネスの原点は、理系の大学院生だった僕たちが15人の仲間と始めた「世界一面白い研究所をつくる」という活動ですし、会社も同じ想いで設立しました。創業当初から「科学技術の発展と地球貢献を実現する」というビジョンを掲げて、その未来の仲間を集めるために始めた出前実験教室がリバネスの祖業になりました。それから20年以上が経過した今でも、僕にとってリバネスは「科学技術の発展と地球貢献を実現する」ための研究機関ですし、その想いで経営しています。

初めてリバネスを知った人にとっては、アカデミアや一般的な企業研究所とは違った見え方をするかもしれませんが、研究者としての本質は全く変わりません。すべての研究者は、仮説と検証の繰り返しによって知識を拡張していきます。そのプロセスから、結果として「世界初」や「新たな仮説」が生まれます。そういった研究者的思考をもち、地球貢献のための活動をする人。これがリバネスにとっての研究者です。

– そういった活動をアカデミアの外でやることの意義は何でしょうか。

髙橋 自分自身もアカデミアの中で育ち、生命科学の博士号を取得した人間として、世界を発展させるためにはアカデミアの研究が不可欠だという信念があります。ただ、実際に世界を変えるためには、アカデミアというセクターの中に知識が存在しているだけでは十分ではありません。その知識を社会に出して、複数の異分野の知識を組み合わせることで、新たな知識をつくりだしていく必要があります。そして、その新たな知識によって未解決の課題を解決するところまでやりきって初めて、実際に世界を変えることができます。リバネスではこの概念を「知識製造業」と呼んでいます。

知識製造業において異分野の知識を組み合わせるためには、双方の知識をしっかりと理解したうえでそれぞれをつないでいく「ブリッジコミュニケーション」が欠かせません。リバネスはこの役割を、サイエンスを軸にして行うサイエンスブリッジコミュニケーターとして担っています。既存の研究活動の可能性を最大限に拡張するために、サイエンスブリッジコミュニケーターとしてのマインドとスキルと経験値を蓄積していくこと。これがリバネスの社員に求められる姿勢です。

同時に、リバネスでは研究そのものを応援するプロジェクトも数多く実施しています。例えばリバネスが創業当初から続けている超異分野学会は、アカデミアや企業といったセクターを超えて研究者が集まり、一緒になって世の中の課題を解決するための新たな研究テーマを生みだす場です。他にも2009年から続けている若手研究者向けの研究助成であるリバネス研究費などを通じて、アカデミアとは常に密接な関係性を築いています。

地球貢献の実現に最も効果的な方法は何か、という研究プロジェクト

– 髙橋さんにとって研究とはどういうものですか。

髙橋 その人以外からは出てこない仮説にもとづいていて、なおかつ、鮮やかな解法にたどり着いたものですね。研究の中には、一度世の中に出ると「どうして今まで気づかなかったんだろう」と受け止められて、あっという間に当たり前になるものがありますよね。僕はそういう当たり前を実現できるものを「鮮やかだな」と感じます。

そういった「その人らしさ」を表現できる研究者が集まって、それぞれが自分にしか出せない仮説を発信して刺激しあえる場があったら最高じゃないですか。僕はリバネスをそういうリサーチ・インスティテュートにしたいんです。

- つまり、リバネスは多様な研究者が集う場であるということですね。

髙橋 そうです。研究者と一言でいっても、一つのタイプに括れるわけではありません。分野の違いはもちろんですが、育ってきた文化や環境などの違いもありますし、そのうえで一人一人の考え方のクセもある。また、プロジェクト型の研究だからこそ活躍できるという人もいます。それぞれの多様性はありつつ、同じビジョンに向かってお互いの知識を組み合わせていくのがリバネスです。

また、リバネスの活動自体も「多様な研究のあり方の一つ」です。表面的に見れば、アカデミアとリバネスは別物に映るかもしれません。一方は研究機関で、もう一方はビジネスを行う事業法人ですから。でも、リバネスの目的はビジネスそのものではありません。目的はあくまで「科学技術の発展と地球貢献を実現する」ことで、そこにたどり着くための方法としてビジネスをしている。いわば「どうすればビジョンに最も効果的に近づけるか」という研究をしているわけです。

さらに、僕たちは狭義の意味での研究にも常に取り組んでいますし、継続的に論文発表や特許取得もしています。つまり、リバネスは研究からビジネスまでの幅の中で全員が研究者と経営者の資質をもつことを目指している会社であり、同時にリバネスの活動を通じて、未来のリサーチ・インスティテュートのあり方を考える会社でもあるんです。

一人一人の新たな仮説が、次のリバネスをつくっていく

– そんなリバネスで、研究者としての経験がどのように活きるのかを聞かせてください。

髙橋 すべての経験を活かすことができます。それは取り組んでいた研究テーマが業務に直結するとか、ロジカルシンキングのスキルとかに限定した話ではありません。「研究者としての生き方」が活きるのがリバネスです。なぜなら、リバネスではすべてのプロジェクトがQPMIサイクルによって生み出されているからです。

質(Quality)の高い問題(Question)に対して、個人(Person)が崇高なまでの情熱(Passion)を傾け、信頼できる仲間たち(Member)と共有できる目的(Mission)に変え、解決する。そして諦めずに試行錯誤を続けていけば、革新(Innovation)や発明(Invention)を起こすことができる。

これがQPMIサイクルです。リバネスではすべてのメンバーが、それぞれのQuestionとPassionにお互いを巻き込みながら、社内外を問わず多様なMemberによるチームを形成し、Innovationを生み出すためのプロジェクトを推進しています。研究者であればピンと来ると思いますが、これは世界初をやり続ける研究者の行動様式そのものなんです。

– 株式会社リバネスは2002年に設立され、2024年6月に22周年を迎えます。研究プロジェクトとしてのリバネスの現状について聞かせてください。

髙橋 大きく成長しています。まだまだ道半ばではありますが、リバネスという実験的な存在を社会で自律的に成長させていくチャレンジを22年間続けられていることには誇りを感じています。

リバネスが仕掛けるすべてのプロジェクトでは、常にビジョンが大前提として存在し、そこからのバックキャストでビジネスを設計します。ビジョンがなければリバネスがやる意味はないですし、ビジネスとして成立しなければ継続することはできません。

代表的なものでいえば、日本最大級の中高生のための学会であるサイエンスキャッスルや、先ほども紹介した超異分野学会がそうですし、世界の課題を解決するためにディープテックベンチャーの発掘から社会実装までを担うエコシステムであるテックプランターも同じです。また、こうしたリバネスの考え方や概念を社会に広く伝えていくリバネスユニバーシティーも、やはりビジョン実現のために不可欠なプロジェクトとして設計したものです。

– 創業時に思い描いた「世界一面白い研究所」に着実に近づいている、といえそうです。

髙橋 そうですね。ただ、これは「想像どおり」「計画どおり」という話ではありません。なぜなら、これは研究ですから。研究ではまず仮説を立てますが、データを蓄積していくことで結果的に世界が広がっていきますよね。リバネスも同じです。仮説を立てたうえで実験をして、データを蓄積して、その分析をすることでまた新たな仮説が生まれる。この繰り返しで進んできたのが、これまでのリバネスです。まさに研究者的思考にもとづいて、研究者がつくってきた会社だといえます。

また、リバネスの概念はグローバルにも大きく広がっています。初の海外子会社であるリバネスシンガポールを2010年に設立したことを皮切りに、現在は6カ国にリバネスのネットワークが広がっていますが、その中でも特に東南アジアのシンガポール、マレーシア、フィリピンの各社がここ数年で急速に成長し、そのことがグループ全体にも良い波及効果を生み出しています。

– では最後に、未来の仲間に向けたメッセージをお願いします。

髙橋 一緒に「科学技術の発展と地球貢献を実現する」ための研究をしましょう。そして、あなたにしか出せない課題感や仮説をリバネスのメンバーに共有してください。そこから、次のリバネスが生まれていきます!