インタビュー

生命科学と農業の融合で、ひとと地球の幸せを目指すひと

塚田 周平(つかだ しゅうへい)
博士(農学)
専門分野:土壌微生物

塚田 周平(つかだ しゅうへい)さんは、地域での活動や農業における新技術導入などでは実績も経験も豊富だ。植物工場では、小型ユニットを飲食店などに展開し、「店産店消モデル」を丸さんと一緒に確立した。多くのメンバーが慕う、そんな塚田さんが目指すビジョンについて話を聞いてみた。

(聴き手:佐野 卓郎)

佐野:塚田さんがリバネスに来たときのこと、覚えてますよ。まだリバネスを立ち上げたばかりの頃、メンバーのほとんどが研究室に内緒にしていたんですよね。先生がどんな反応をするか分かりませんから。そんな中、丸さんが「後輩にちょっと強面のひとが入ってきたんだけど、もしかしたら彼は気づいているかもしれない」と言い出したんです。「巻き込むなら今のうちだ」と言いながら、でも強面だし声をかけようか迷っていたのを覚えています(笑)。

塚田:当時、リバネスはすでに新聞記事にもなっていましたし、隠せるわけないですよね(汗)。

佐野:そもそも、なぜ農学の道を選んだのでしょうか?

塚田:理科が好きだったんです。虫や恐竜や生物が大好きでした。昔、地球や自然史を描いた漫画本をもっていたのですが、高校生になってから、もう一度読み返したことがありました。そこには、地球と人類の関係が描かれていて、人類が農業をし過ぎると、地球から資源が奪われていき、やがて人類は農業をすることすらできなくなるという話が描かれていました。これはとても大きな問題だと感じたんです。
その後、現役受験に失敗した私は、なぜ自分は大学に行きたいのか、半日くらい父と共に考える時間をつくりました。今後益々生命科学が盛んになるだろう未来について。生命科学が何の役に立つのかを見極めたいという気持ち。遺伝子組換えもそうですが、社会の認知度が低いせいで広がっていない技術がたくさんあります。こうしたことから、ライフサイエンス+農業で貢献できる研究を考えることにしました。
ちょうどそんな折、父が私にある新聞記事を紹介してきました。そこにはパブリックアクセプタンス活動に関する話が書いてあって、私はその重要性にとても共感しました。これなら、自分の一生を捧げてもよいと思ったんです。その記事がリバネスのものでした。

佐野:塚田さんが来たときは、まだリバネスも会社っぽくなかったですよね?

塚田:まぁ、そんなことは分からなかったですね。会社とはどうあるべきかなんて考えていませんでしたから、「こういうものなんだ」程度にしか思っていませんでした。

佐野:インターンシップに参加して、どんな活動をしましたか?

塚田:インターンシップには修士1年から博士の終わりまで、博士論文の期間だけは一旦研究に専念しましたが、長い期間参加していました。そこで、数え切れないくらい実験教室をやりましたね。自分のそもそものモチベーションに近い活動だったんですよ。科学技術をわかるようにちゃんと伝えて、子供たちや学校の先生、一般の人たちなどにちゃんと理解してもらうことは、とても重要だと考えていましたから。

佐野:入社してからはどんな活動をしましたか?

塚田:インターンシップの頃の活動を評価していただき、当初から、教材開発事業部部長をやっていましたので、中高生向けサイエンス誌『someone(サムワン)』などを手がけていました。『someone』は、リバネスで立ち上げた最初のメディアなのですが、実験教室よりも、広く科学の魅力などを伝えていくことができます。学校の先生に会いに行くためのツールとしても非常によかったと思います。

佐野:これまでで一番心に残ったプロジェクトについて教えて下さい。

塚田:神奈川県にある高校で実施した実験教室です。私が営業して、初めて実施が決まった実験教室でした。メッセージをメンバー全員で、ちゃんとつくりこんで講師(TM)として巧みに伝えていく。高校生たちがそれをちゃんと受け止めてくれると、表情など目に見えて変化があるんです。とても感慨深い思いをしました。

佐野:塚田さんは、「植物工場」に関する事業を立ち上げましたよね?

塚田:まだ大学院に在学していた2009年頃から始めました。当時はアグリ事業部というものがあり(現在は地域開発事業部と研究開発事業部に継承)、川名さんが一緒になって始めていました。植物工場は特に海外では注目されていますよね。農学の新しい技術が社会に見えやすく実装されて、非常に分かりやすいですし、「世界中のどこでも食料を生産できます」といったメッセージがあるランドマーク的な事業だと思います。ビジネス的にはまだ課題がありますが、でもとても意味のある取り組みだと考えています。

佐野:今後はどのような取り組みをしたいですか?

塚田:私は長い間、地域開発事業部長をやっていたのですが、当初は、地域にはどんな産業があり、技術をもってどのような貢献ができるかを考えていました。多くの地域では一次産業が盛んですから、私たち自身が一次産業に新技術を導入していくことで、いかに各地域に貢献できるかということを考えていたんです。しかし現在では、地域には様々なプレイヤーがいることを知り、大手企業、町工場、アカデミア、地方銀行そして熱意ある人々を未来に向けてどう活かし繋いでいくのかを考えるようになりました。

佐野:それが熊本県での「熊本TECH PLANTER(テックプランター)」につながるんですね。

塚田:地域発ベンチャー企業を創出する。そのための仕組みをつくろうと考えています。まずは、農業分野での展開を強化したいですが、医療など別の分野にも応用できる仕組みが開発できればと考えています。地域のひとたちとともに、科学技術をもって世界あるいは地域の幸せをどのように創出していくのかを考えていきたいと思います。

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