インタビュー

「たとえ苦手なことでも、やりたいことには挑戦していい」と伝え続ける人

教育開発事業部の濱田 有希は中学3年生の時に、リバネスの教育プログラム『出前実験教室』に参加して、サイエンスの面白さを知った。大学では小さい頃からの夢だったロボット工学を学び、インターンを経てリバネスに入社。中高生にサイエンスの面白さを伝える立場になった今、「たとえ苦手なことでも、やりたいことに挑戦していい」と生徒に伝え続けている。彼女がなぜそのような想いを持つに至ったのか、その変遷を聞いた。

濱田 有希(Yuki Hamada)

神奈川県出身。千葉工業大学大学院工学研究科未来ロボティクス専攻修了(工学修士)。在学中は三輪車型ロボットの姿勢制御などについて研究。2022年にリバネスに入社し、教育開発事業部に所属。

サイエンスの面白さを教えてくれた、リバネスの『出前実験教室』

まずは濱田さんとサイエンスとの出会いについて聞かせてください。

小学1年生の時に買ってもらった『学研の科学』がきっかけです。付録に組み立て式のプラネタリウムが付いていて、同封されている冊子では星座や宇宙について紹介されていました。それらの教材に触れて、科学に興味を抱くようになったんです。

私はサイエンスの中でも、工学というか、ものを動かしたり組み立てたりすることが好きだったんですね。科学館ではロボットの展示が好きでしたし、小学6年生の時には、日本発明振興協会の「発明教室」にも通わせてもらって。中学3年生の頃には科学部を立ち上げ、同じ時期にリバネスの『出前実験教室』にも参加しました。

『出前実験教室』は、中高生向けにサイエンスとテクノロジーの面白さを伝えるプログラムですね。濱田さんは、どのような内容の教室に参加したのでしょうか?

実験教室は毎回異なるテーマや実験内容が用意されるのですが、私が参加した時は、校内に生えたタンポポのDNAを鑑定して、外来種か在来種かを調べるというものでした。

実験や講義も面白かったのですが、私の記憶に残ったのは「リバネスの人々」です。すごく親しみやすくて、親戚のお兄ちゃんやお姉ちゃんのように接してくれました。リバネスの社員同士も仲が良く、壁を感じさせない関係性だったので、とても居心地が良かったんですね。

高校1年生の頃に参加した出前実験教室

それに、リバネスの人から聞く研究の話も面白かった。リバネスは研究者集団で、全員が研究テーマを持っています。その時は、ハエの脳を研究している人や、ネズミの味覚を研究している人がいて、学校の授業では聞けないような面白い話が聞けました。

それで、すっかり『出前実験教室』にハマってしまい、高校に進学してからも、毎年参加し続けました。

中3から毎年ですか?

はい、高3まで毎年。4年連続で参加した人はあまりいなかったと思います。それくらい居心地が良くって。実験や講義も面白かったのですが、リバネスの人に会いたいという気持ちも強くて(笑)。仲良くなる人も多かったので、リバネスが学生向けに発行しているサイエンスの冊子『someone』を読む時は、「誰が執筆したんだろう」と気になってクレジットを確認するほどでした。

また、高校3年生の頃には、リバネスが主催する中高生のための学会『サイエンスキャッスル』で、「タンポポの生態調査~カントウタンポポを守るには〜」というテーマで研究発表に参加しました。

高校3年生の時にサイエンスキャッスルで発表したポスター

「ロボットを動かしたい」その一心で、苦手な理系科目に取り組んだ

中高生時代には『出前実験教室』に何度も参加して、科学部にも所属していたので、やはり進路は理系学部を志望していたのでしょうか?

はい。小さい頃に科学館で出会ったロボットの影響で、「将来はロボットを作りたい、動かしたい!」と考えていたので、大学は工学部に進みたかったんです。

でも、実は理系科目の勉強がとても苦手で……。科学部の部活や実験は好きでしたが、物理や数学のテストでは赤点を取ることもありました。

一般的には、得意な科目を進路に選ぶ人が多いですが、濱田さんはやりたいことを優先したんですね。受験勉強は、相当努力されたのではないでしょうか。

そうですね、かなり苦労しました。数学は少しずつ解けるようになって、面白さも感じられるようになりましたが、物理は変わらず苦手なままで……。それでも、なんとか工学部に進学できたんです。

憧れていたロボット開発に携われるようになったんですね。どのような大学生活を送っていたのでしょうか?

大学ではロボット工学を学びながら、3年生からはリバネスのインターンにも参加しました。

実は、高校時代から「リバネスみたいな会社に入れたらいいな」と思っていて、本当はもっと早くインターンに参加したかったんです。でも、リバネスの人からは「ちゃんと大学で勉強して欲しいから、3年生までは受け入れません」と言われて。

インターンでは『出前実験教室』の企画運営や、冊子『someone』の執筆などを担当していました。この時の経験から、リバネスで働きたいという思いが強くなったんです。

大学卒業後はリバネスへの入社も視野に入れて、修士課程に進学しました。リバネスは修士、もしくは博士課程を修了していなければ入れない会社なので、進学はその条件をクリアする意味合いもあったんです。

大学院では、三輪車型ロボットの姿勢を一定に保ちながら、面積が狭く、整地されていない地面(狭隘不整地)を走破するための制御研究をして。修士課程を修了して、リバネスに入社したという流れになります。

ちなみに、就職活動中は他の企業へ応募はしなかったのでしょうか?好きなロボットに関係するような企業とか、学習塾が運営しているロボット教室とか。

ロボットを動かすことにはワクワクするのですが、図面の製作やプログラミングなど、技術的なことはあまり興味が持てなかったので……。企業でロボティクスに関わりたいという気持ちは強くありませんでした。

学習塾も受けてみましたが、カリキュラムが固まっていて、伝えなければいけないことも決まっていたので、自由度が低いと感じてしまって……。私が教育に携わるとしたら、生徒には正解がない中で思考を重ね、考える力を身につけてもらいたい。『出前実験教室』は、そのような考える力を育む場になっているので、やはりリバネスで働きたいと思いました。

一度他の会社を見てみて、それでも働きたかったんですね。入社試験はスムーズに進みましたか?

インターンに参加していたこともあり、わりとスムーズに進みました。強く記憶に残っているのは「全社プレゼン」です。

リバネスでは採用の最終関門として、入社希望者が全社員に向けて、入社してから取り組みたいことを発表する「全社プレゼン」を実施しています。

私の場合は、「子どもたちが本当に好きなことを見つけ、そこに突き進む人を増やしたい」という想いを話しました。

私は理系科目が苦手でしたが、それでも「ロボットを動かしたい!」という一心で工学部に進学しました。でも、そういう人は少数派です。理系科目が苦手なら、別の道を選ぶ人が多いですが、私はそういう人を見て、私はいつも「もったいない」と思っていたんです。

多くの中高生は成績表を見て、自分の「好き」を諦めてしまいます。やりたいことがあるのに自信が持てず、偏差値や進学先の評判で進路を選んでしまう。

だから私は「好きなものがあったら、成績は関係なくそこに向き合っていいんだよ」と伝えていきたい。学生にとって周囲の大人の影響は大きいので、いつかは教師や保護者にもアプローチしていきたい。全社プレゼンではそんなことを話しました。

好きな道を進んできて良かった。だから「やりたいことを貫いて!」と伝え続けたい

リバネスに入社した現在は、どのようなプロジェクトを担当しているのでしょうか?

教育開発事業部で、『出前実験教室』や中高生のための学会『サイエンスキャッスル』の企画・運営をする他、冊子『someone』の編集長などを担当しています。

どれも濱田さんが中高生時代から関わってきたプロジェクトばかりですね。入社してから、印象的だった出来事はありますか?

母校の相模女子大学高等部で行った『出前実験教室』です。実験のテーマは、私が中学生の時に受けた時と同じ「タンポポのDNA鑑定」で、当日は教壇に立って講義や実験をしながら、サイエンスの魅力を伝えていきました。

学生の皆さんには、「知ることで見える世界が広がる」というコアメッセージを伝えたかったので、このメッセージを起点に、講義や実験の内容を考えていきました。

相模女子大学高等部での『出前実験教室』の様子

リバネスを知るきっかけになった実験教室を、今度は自身がリバネスのスタッフとして母校に届けたんですね。それは熱意がこもったのではないでしょうか。そのほかに、入社してから印象深かった仕事はありますか?

リバネスが発行する冊子やプレゼンテーションの資料に使われているキャラクター、「棒人間」を生み出したことです。

リバネスがどのような会社なのかを社外に説明するために、棒人間のイラストを使って「漫画でわかるリバネス」というコンテンツも作りました。

左は「漫画でわかるリバネス」。右はマレーシアで開催された「Science Castle in Asia 2024」で棒人間が使用された様子。
画像上は「漫画でわかるリバネス」。画像下はマレーシアで開催された「Science Castle in Asia 2024」で棒人間が使用された様子。

すごく親しみやすい絵柄ですね。

ありがとうございます。例えば数学や理系科目って難しいと思われがちで、とっつきにくいじゃないですか。でも、棒人間のようなイラストを添えると、身近に感じられるようになり、情報のハードルが下がります。

棒人間は、難しいと思われがちな情報と、それを受け取る人を繋ぐための「ブリッジ(橋)」になってくれたらいいなと思っています。

最後に、今後リバネスでどのようなことをやっていきたいか、教えてもらえますか?

繰り返しになってしまうんですけど、「たとえ苦手なことでも、好きなことには挑戦していい」と伝え続けていきたいです。

物理や数学は苦手でしたが、それでも好きなロボット工学を学んできてよかったと思っています。だからこそ、成績が上がらなくて道を諦めようとしている学生に寄り添っていきたい。その想いは譲りたくないんです。

◆◇◆リバネスは通年で修士・博士の採用活動を行っています。 詳しくは採用ページをご確認ください。