インタビュー

「やりたいことを1つに決められない」だからこそリバネスを選んだひと

科学の面白さを伝えるのが好き、研究も好き、記事や雑誌を作るのも好き。そんな沢山の好きを持っているのが吉川 綾乃だ。学生時代は、化学教員を目指して教員免許取得に励んだ。また同時に「河川の新しいルールを作る!」という想いのもと、河川に流れる化学物質がカエルにどんな影響を及ぼすかという研究にも情熱を注いでいた。好きなものを1つに絞れないが、全てのことに全力投球。そんな彼女が、なぜリバネスを“選んだ”のか、どう自身の好きを追求しているのかを聞いた。

吉川 綾乃(Yoshikawa Ayano)
東京都出身。麻布大学大学院環境保健学研究科修士課程修了(環境保健科学修士)。在学中は両生類を用いてマイクロプラスチック吸着化学物質の毒性影響について研究。また中学校・高等学校理科の教員免許を取得。2022年5月にリバネスに入社し、教育開発事業部に所属。

私の熱で部活が変わった

吉川さんはいつ頃からサイエンスに興味を持ち、研究者という存在を知ったのでしょうか?

私はサイエンスが身近な環境で育ちました。祖父が出版会社で科学本や科学誌を制作しており、家には魚図鑑や様々な模型やキットなどがありました。また、父も企業の研究職だったので、科学者や研究者がどんな仕事であるかは、なんとなく知っていましたね。

それで私も自ずとサイエンスを好きになり、小学生の頃から理科が得意科目でした。次第に「生物部か科学部に入りたいな」という思いが芽生え、それらの部活がある中学校を受験しました。

実際、中学校ではそういった部活に?

はい、生物部に入りました。でも、いざ入部してみると、放課後にみんなで漫画を読んだり、おしゃべりをしたり、生物部らしい活動を全くしてなくて。当初は私も「カルメ焼き作ってみますか?」「イカを買って解剖してみませんか?」といろんな角度でアプローチをしてみたのですが、なかなかうまくいかず、結局は一緒に少女漫画を読んでいました……(笑)。それでも中学2年生の春に「今年は部員を増やしましょう!」と提案して、新入生歓迎会の部活紹介コーナーに初めて生物部が立ったんです。それをきっかけに新たな部員も少しずつ増え、生物部らしい活動が始まりました。

吉川さんが生物部を変えたんですね!

中高一貫校だったので合計で6年間生物部でしたが、最終的には高校3年のときに部の合宿を開催することもできました。部活の合宿は顧問の先生が引率する必要があり、協力を仰がないといけません。また、宿泊費や移動費は部費でまかなうため、その意義をしっかりと学校に伝えて、部費をもらうための交渉も必要です。それらを乗り越えて合宿を開催することができて、すごく達成感がありました。また同時に、「母校の生物部がしっかりと活動できるよう、教員として戻ってきたい」という気持ちも芽生え、教員を目指し始めました。

河川のガイドライン改正を目指し、カエルと共に生活

学部生の時点で教員採用試験を受けたのですか?

そうです。でも落ちてしまったため、大学4年生の夏から急いで就職活動を始めました。一方で、所属していた研究室では偶然にも良いデータが出て……(笑)。結果的に就職ではなく、研究者になるべきなのではと感じ、院進することを決めました。

どのような研究をしていたのでしょうか?

環境科学を専攻し、カエルを用いてマイクロプラスチック吸着化学物質(以下、MP)の毒性影響について研究していました。簡単に説明すると、カエルやオタマジャクシにMPをかけて、健康状態への影響や、どんな変化が現れるかを実験していました。常にカエルを観察する必要があったため、ずっとカエルと一緒にいるような時期もありましたね。

当時の私にとっては、都道府県が示す水質汚染ガイドライン、つまり法律を私の手で変えてみせる!というのが研究のモチベーションでした。「私の研究で法律を変えた!」と言えると、かっこいいなと(笑)。ガイドラインに含まれていない化学物質が生物に影響し、川の汚染の原因であることを証明すれば、日本中の川が綺麗になると考えていました。

教員を目指すという志は、大学院時代にもあったのでしょうか?

はい、結果的にあの頃は教員試験の勉強と研究、就職活動、アルバイトを掛け持ちしていました。やりたいことを1つに絞れないところがあって、しかもどれも手を抜きたくない性格なので。ときには睡眠時間が2時間しか取れないこともありましたね。でも、どれも自分のやりたいことであり、つらさを感じたことはありません。むしろ、どれも楽しい時間だったと今でも振り返ると感じます。

「なんでもやりたい私」が出会ったのがリバネスだった

やりたいこと全部に対して全力投球な吉川さんにとって、修士課程後の進路を選ぶのは大変だったのではないでしょうか?

そうなんです。「化学の教員になりたい」という元々の思いもありつつ、研究を続けたくて博士という道も考えましたし、父の職業でもある企業の研究職にも関心がありました。ほかにも、記事を書いたりレイアウトを見たりするのも好きだと気づき、企業の広報やサイエンス誌の編集部など、幅広い職種で就職活動をしていました。

そんな時にリバネスを見つけて、『someone』や『教育応援』など冊子の制作や、「身近なふしぎを興味に変える」をコンセプトにした『出前実験教室』、中高生研究者が集まり、自らの研究を発表し議論し合う『サイエンスキャッスル』など、多岐にわたる活動を展開していることを知り、「何でもやりたい私の性格に合いそう!」と思ったんです。

そこからすぐ採用選考に?

いえ、コンタクトをとって最初に面談をしてくださった地域開発事業部の福田裕士さんに「もう少しリバネスを理解してから決めたほうがいいと思います」というアドバイスをいただいて。それで、リバネスが日本財団およびJASTOと実施しているマリンチャレンジプログラムの研究コーチを担当することになりました。

マリンチャレンジプログラムとは、人と海との未来を創り出す仲間づくりのため、海洋・水環境分野の研究に挑戦する10代の次世代研究者を対象に、研究資金助成や研究コーチによるサポートを実施。

マリンチャレンジプログラムでは、どのような次世代研究者を担当しましたか?

面白い研究者がいっぱいいましたよ。印象的だったのは、私の研究と同じようなことをシジミで実験している研究者がいました。実験内容はほぼ変わらなかったのですが、その研究者が実験できるよう「伝える」のはとても難しいなと感じました。

他にも、「地学部だから湧き水の研究してるんですけど、本当は宇宙に興味があって……」と言う少し不思議な子がいました。それでメンタリング前に「こういう宇宙のニュースあったよね」と、宇宙に関する話をアイスブレイクとして話していました。ほんの2、3分の雑談なのですが、それだけで明らかに「目が変わる」のを感じましたし、その後のメンタリングの質も良いものになりました。

リバネスが提唱する「サイエンスブリッジコミュニケーション」を感じるエピソードですね。

まさにそうなんです。元々教員を目指していたので「サイエンスをわかりやすく多くの人に教える」というサイエンスコミュニケーションのことは学んでいました。しかしリバネスがいうサイエンスブリッジコミュニケーションは、伝えて終わるのではなく、本人がその後にワンアクションを起こせるようになるまで伴走することだなと。それが「ブリッジ」という言葉に込められているんだなと、今は考えています。

ちなみに、実は去年、その子が国際天文学オリンピックで優勝したという記事を見たんです!私の話がどこまで影響したかはわかりませんが、自分も少しはブリッジできたのかな、と嬉しくなりました。

リバネスでは、先端の科学技術に関する正しい知識を身につけ、やりとりをする対象に合わせてわかりやすく伝えることを『サイエンスコミュニケーション』と名付けています。

「リバネスの吉川」として、これから仕掛けていきたいこと

2022年入社の吉川さんは今年で3年目ですね。現在はどのような業務を担当していますか?

入社時からずっと教育開発事業部に所属しています。先ほど説明したサイエンスキャッスルや出前実験教室、そしてリバネスとパートナー企業が設定するテーマに対して独創的な研究を進める中高生を研究助成するサイエンスキャッスル研究費などのプロジェクトを担当しています。

入社前後で、リバネスに対する印象の違いなどはありますか?

一つは、運営するって、こんなに大変なんだなと感じました。入社前の研究コーチでは、学生のメンタリングのみを担当していたので、全体を俯瞰してプロジェクトを運営する難しさが見えていなかったんですね。例えばサイエンスキャッスルでいうと、実施会場の選定、参加者の募集、当日の運営、事後のフォローとやるべきことは山のようにあります。関係者としっかりコミュニケーションを取りながら、どのタイミングでどんな判断を下すべきかを考える力を身につけることができました。

もう一つは、「なんでもできる」という言葉の捉え方が変わりました。実は入社前の代表面接で丸さんに「リバネスはなんでもできるよ。もちろんカエルの実験も!」と言われたんですね。当時の私はそれを「自由に好きなことをやっていい」と受け取っていました。しかし、リバネスの「なんでもできる」は、自分がやりたいことを実現するために、どんな人たちを巻き込み、どう持続可能なビジネスにするかを考えることなんですよね。私が大学院時代に抱いていた「河川の評価をどう作っていくか」というのは、まだまだプロジェクト化するまでには至っていません。「リバネスの吉川」としてこれを形にするために、これからチャレンジしていきたいと思っています。

吉川さんがどんなプロジェクトを生み出すのか、楽しみです。本日はありがとうございました!

リバネスは通年で修士・博士の採用活動を行っています。 詳しくは採用ページをご確認ください。