インタビュー

研究者集団のリバネスに「アントレプレナー」が必要な理由。

「できるかできないか」は重要ではない。大事なのは「最後までやり切る」こと。

─ 最初に「なぜこの採用サイトが必要だったのか」というところから話を聞かせてください。というのも、リバネスにはすでに採用サイトが存在しますよね。

丸 確かに、採用サイトをいくつも持つ会社というのは珍しいかもしれません。でも、複数あったらいけないという決まりはないですよね。よその会社がそうだからといって「右にならえ」をする必要もないし、常識に囚われる必要もない。新たにつくったのは、複数あったほうがいいと思ったから。実にシンプルな理由です。だってその方が、いろんな人が来てくれる可能性が広がるじゃないですか。

─ つまり、リバネスは多様な人材を集めたい。

丸 そうです。組織がサステナブルな成長をするためには、クリエイティビティとダイバーシティが必要だというのが僕の持論です。いろんな背景を持った人が集まり、それぞれが知識やアイデアを出し合って新たなプロジェクトを仕掛けるからこそ、持続的な成長が実現するわけです。だから、金太郎飴みたいな組織にはしたくない。リバネスには、いろんな個性を持った人に来てほしいんです。

─ 採用サイトが1つだと、どうしても似たタイプの人が集まってしまう、と。

 先に完成している採用サイトは、基本的には研究者をターゲットにしています。リバネスは研究者の集まりであり、それぞれが自分が好きな研究に打ち込むことで、社会課題を解決したり、世の中の仕組みを変えることを目指しています。なので、採用のメインターゲットが研究者であることは間違ってはいません。でも、じゃあ、優秀な研究者だけが集まればその目標にたどり着けるかというと、そういうものではないんです。

─ では研究者の他に、リバネスにはどのような人が必要なのでしょうか。

 僕がイメージしているのは「アントレプレナー」です。

─ 起業家ですか?

 過去に起業したことがあるとか、そういうことではないですよ。まったく新しいことに挑戦したい。誰も手掛けていないことをやってみたい。これまでの価値観をぶち壊したい。そんなマインドをもつ人という意味です。リバネスは来年20周年を迎えますが、なぜここまで来れたかというと、1つにはアントレプレナーが集まっていたからだと思うんです。一人一人がアレをやりたい、コレをやりたいという想いでいろんなことに挑戦してきた。だからこそ、どんどん事業が広がっていったんです。

─ アントレプレナーであれば、必ずしも優秀な研究者でなくてもかまわない?

 もちろんです。ただし、研究者的な思考ができる人であれば、という前提条件はつきますけど。

─ 「この分野なら誰にも負けない」という専門性がなくても?

 あるに越したことはないですが、別になくてもかまわないかな。

─ では、目標みたいなものは? 「リバネスに入社したらこれをやりたい」という明確な目標があったほうが活躍しやすいということはないですか。

 それもどっちでもいいですね。僕らは「科学技術の発展と地球貢献を実現する」というビジョンを掲げていますから、それに近い目標を持っている人は、自分の意に沿う仕事がしやすいかもしれません。でも「単に新しいことをやってみたい」とか「何か事業を始めたい」とか、そういうぼんやりした目標しかなくても全然かまいません。

─ とにかくアントレプレナー精神と研究者的思考があればよいと。

 そこに1つ加えるとしたら、やり切ることができる人がいいですね。

─ つまり、どんな仕事を任されたとしても成功できる人、ということですか?

 いや、できるかできないかの話ではなくて。「じゃあ、できなくてもいいんですね」と開き直られても困るけど(笑)。でも現実問題として、いくら頑張ってもできないことはあるわけですから。僕が言いたいのは、最後までやり切れるかどうか。「途中で野垂れ死にするかもしれないけど、自分はとにかく最後までやり切る自信がある」。そう言い切れる人がいいですね。

─ それが根拠のない自信だとしても?

 はい、もちろん。そもそも何かしらの「根拠」を持っていたとしても、そんなもの、あまりアテにはなりませんし(笑)。

これから飛び込んでくる人たちが、リバネスの未来をつくる。

─ では、リバネスに入社した「アントレプレナー」にはどんな日々が待っているのか。そのあたりを聞かせてもらえますか。

 アントレプレナーとして入社したら、とにかく新しいことをやってもらうことになるでしょうね。

─ 具体的には?

 特に決めているわけではありません。「自分はコレがやりたい」というものがあるなら、それをやってもらうかもしれないし、僕のほうから「コレをやってくれ」とお願いするかもしれないし。

─ いきなり大仕事を任されることもある?

 いくらでもあると思いますよ。実際、過去には入社してすぐに新規事業を任されたり、グループ会社の責任者に就いた人間もいますから。そうそう、これは「大仕事」と言えるかどうかわからないけど、入社から数日後にアフリカに行った社員もいます(笑)。

─ えっ?どういうことですか。

 ちょうどアフリカのレソトという国に行く仕事があったんですよ。本当は僕自身が赴くはずだったんだけど、事情があってどうしても難しかった。周りを見渡しても行けそうな人間がいない。それで、入社したばかりの社員に「レソト行ける?」と聞いたら「はい」と。それで行ってもらったんです。

─ 入社していきなりレソト……。普通の会社ではありえないですね(笑)。

 まあ、そうでしょうね。でも、うちにとっては珍しいことではありません。さすがに入社してすぐアフリカに出張したのは彼ぐらいですが、それに近いことはいろいろあります。

─ 楽しそうというか、なんというか。

 そう、そこなんですよ。うちに来たら、今まで経験していないことや、まったく想像していなかったことに直面することもあると思います。そのときにどう受け止めるか。「そんなのやったことがないからできない」と思うか、それとも「なんだか楽しそうだからチャレンジしてみたい」と思うか。アントレプレナーは後者なんです。

─ いきなりレソトに行ってくれと言われて怖じ気づく人ではなく、むしろ自分から手を挙げる人がいいと。

 そういう人のほうがうちには合っています。より正確にいうと、きちんと「飛び込む」ことができる人ですね。予期しないことを言われたときに、一瞬「えーっと……」と考えることも大事なんです。でも、その上で「とりあえずやってみます」と答えることができるかどうか。急に言われたことではあるけど、それを受け入れた上で、やり切ることができる。根拠はないけど、その自信がある。そういう人に来てもらいたいですね。

─ 今回2つめの採用サイトを立ち上げたわけですが、実は3つめも予定していると聞きました。 

 詳細はお楽しみにということにしておきますが、近いうちに第3弾を立ち上げる予定です(※2022年1月に「好奇心ドリブン!」採用サイトがオープン)。

─ それがオープンしたら、より多様な人材が集まることになりますね。

 そう、だから、これまでにも増して面白い会社になると思いますよ。

─ そんなリバネスは、これからどのような方向へ歩んでいくのでしょうか。

 今の時点ではなんとも言えません。「科学技術の発展と地球貢献を実現する」というビジョンは変わりませんが、具体的に5年後、10年後に何をしているのかを明言するのは難しい。なぜなら、これからどんな人たちが入社してくるかによって、未来のリバネスの姿は大きく変わるからです。僕たちは、設立から20年をかけて科学技術発展のための知識プラットフォームを構築しました。じゃあ、それを使って何をしていくのか。それは僕たちだけでなく、これからリバネスに飛び込んでくる人たちと一緒に考えていきたいんです。

─ それだけ期待が大きいということですね。

 もちろんです。どんな人が入ってくるのか、本当に楽しみにしています。(2021年10月17日時点)


丸幸弘(まる・ゆきひろ)/東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻博士課程修了、博士(農学)。2002年大学院在学中に理工系大学生・大学院生のみでリバネスを設立。日本初「最先端科学の出前実験教室」をビジネス化。大学・地域に眠る経営資源や技術を組み合わせて新たな知識を生み出す「知識製造業」を営み、「知識プラットフォーム」を通じて200以上のプロジェクトを進行させる。町工場や大手企業等と連携したアジア最大級のベンチャーエコシステムの仕掛け人として、世界各地のディープテックを発掘し、地球規模の社会課題の解決に取り組む。株式会社ユーグレナをはじめとする多数のベンチャー企業の立ち上げにも携わる。主な著書に『知識製造業の新時代』(リバネス出版)、『ディープテック DeepTech 世界の未来を切り拓く「眠れる技術」』(日経BP)、『世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。』(日本実業出版社)など。

リバネスは通年で修士・博士の採用活動を行っています。 詳しくは採用ページをご確認ください。