見切り発車でも走り出す。ダメなら何度でもやり直せばいい。
リバネスに「やりたくない」仕事はない。
─ 上野さんは、グループ開発事業本部とリバネスアメリカの代表を兼任していますよね。
上野 はい。リバネスアメリカは2018年からで、グループ開発事業本部の本部長は今年10月からです。あとはジャパンモスファクトリーというベンチャーの取締役もやっています。
─ なんというか、「できる人」感がありますね。
上野 いやいや、そんなことないですよ(笑)。でも、いろんなことをしているのは事実ですね。私いま入社8年目なんですけど、ずっとあちこちの部署を転々としてきたんです。最初は人材開発事業部で、その後、メディア開発、教育開発、戦略開発、創業開発、国際開発という感じで。なので、社内のひと通りの業務がわかっているというのはあるかもしれません。
─ リバネスではそれが普通なんですか?
上野 いえ、人によります。1つのテーマをずっと追い続けている人もいるし。転々とすることが珍しいわけではありませんが、私ほど渡り歩いている社員はいないかもしれません。
─ 渡り歩いたのは自分の希望で?
上野 私自身がやりたくてやらせてもらった仕事もあるし、会社から言われたものもあります。
─ ちなみに「そんな仕事はやりたくない」と断わったことは……?
上野 それはないかな。そもそも仕事に対して「やりたくない」と思うことがほとんどないですね。何であれ、とりあえずやってみたいと思う。実際にやってみて、最初は手探り状態でも、だんだん面白さがわかってきたりしますから。
自分は世界一ラッキーな人間だ。
─ いろんな部門を経験して、いくつかは責任者を務めるに至っているということは、それだけ実績を残してきたということでしょうか。
上野 うーん、どうでしょう。私なりにうまくできたと思うものもあれば、そうでないものもありますし。ただ、以前、丸さんに「上野の良いところは、もやもやしたまま走り出せるところだな」と言われたことはありますね。
─ どういうことでしょう?
上野 ゴールまでの道筋が敷かれているというか、ある程度成功が見えていないと動き出さない人もいると思うんです。石橋を何度も叩いて渡るタイプというか。それに対して私は、先が見えなくても見切り発車しちゃうようなところがあると。それは確かにそうかもしれないと思いました。
─ リバネスでは、それがうまくはまっている?
上野 この会社しか知らないので実際にはわかりませんが、普通の会社だったら、私のようなタイプは「危なっかしくて見ていられない」と思われる気がします(笑)。でもリバネスは「とにかくやってみろ」「とにかくチャレンジしてみろ」という会社なんですよ。やってみてうまくいかなかったら軌道修正すればいいし、それでもうまくいかなかったらゼロからやり直せばいい。だから「もやもやしたまま、走り出せる」タイプが望まれるのだと思います。
─ まさに上野さんにピッタリですね。
上野 もう本当に、リバネスという会社と出会えてよかったと心底思っています。ちなみに、これは私の信念でもあるんですが「自分は世界一ラッキーな人間だ」と本気で思っています(笑)。
─ そもそも、なぜリバネスで働くことになったんですか。
上野 私、大学では300度くらいの高温でも生きられる好熱菌という微生物のタンパク質の構造を調べる研究をしていたんです。で、研究自体は好きでしたが、それを一生の仕事にしたいかというと少し違うかもしれないとも思っていて。そんなときに、たまたまリバネスが発行しているincu・beで、丸さんと修一郎さん(代表取締役社長COO・髙橋修一郎)の対談を読んだんですよ。それで面白い会社だなと思ってコンタクトを取って、インターンとして働くようになったんです。
─ いきなりコンタクトを取った?
上野 はい。丸さんのTwitterに「インターンとして働きたい」とメッセージをしました。そうしたらすぐに「今度、関ヶ原で会社説明会を兼ねた合宿を行うのでぜひ参加してください」と返事があったんです。
─ 関ヶ原……。ずいぶん唐突な話ですね(笑)。
上野 そうなんですよ。「何でわざわざそんなところに」と思いつつ、ともあれ行ってみました。そうしたら、あー、やっぱり面白い会社だなと。それでインターンとして働き始めて、博士号を取得後に正式に入社しました。
─ ちなみに関ヶ原合宿は今も行われている?
上野 いえ、後にも先にもそのときだけです。なので、これから応募しようと考えている人はご心配なく(笑)。
超異分野チームで、地球規模の課題に取り組む。
─ これまでに取り組んできたプロジェクトで特に印象深かったものについて、いくつか教えてください。
上野 ここ2~3年でいうと、ハワイの島々に循環型の経済システムを導入するというプロジェクトを立ち上げました。小さい島って、本土に頼らなければ生きていけないですよね。でも、それだと持続可能とは言い難い。そこで、ベンチャーが持つ技術を活用することで、外部に頼らなくてもいい循環型社会に変えていくという試みを始めたんです。
─ もう成果は出ているんですか。
上野 ある程度、形になりつつあります。だから、今後はフィリピンなど東南アジア諸国に広げていきたいと考えています。
─ なるほど。そのほかには?
上野 今、力を注いでいるのがプロジェクト・イッカクです。これは増え続ける海洋ゴミの削減を目指すというもので、私たちリバネスと日本財団、日本先端科学技術教育人材研究開発機構(JASTO)の合同プロジェクトとして進めています。私はプロジェクトマネージャーとして全体の指揮を執っています。
─ 具体的にはどんな試みなのですか。
上野 あらゆる分野の知識や技術を総動員して解決を目指そうというのがコンセプトです。そこで、まずはこのプロジェクトに参画してもらえる個人や団体を広く募ったんですね。皆さんが持つ技術やアイデアを海洋ゴミの削減に役立ててもらえないかと。そうしたら、学術機関や中小企業、スタートアップ、町工場など62ものエントリーがありました。ドローンや人工衛星を活用してデータを収集するとか、海中ステーションでゴミを回収するとか、熱分解プラントで再資源化を図るとか、本当にさまざまなアイデアが集まりました。
─ 今はそれそれがそれぞれの方法で取り組んでいる?
上野 いえ、そうではなく、いくつかチームを結成しました。個別に取り組むよりも、いろんな分野の専門家が力を合わせてアプローチしたほうが解決に近づけるだろうと。
─ 「超異分野チーム」というわけですね。
上野 はい、現在は3つのチームがそれぞれ課題を設定し、事業化に向けて研究を続けています。
─ 海洋ゴミの削減というのは、地球規模で取り組まなければならない課題といえそうですね。
上野 もちろんです。だから、すぐに目に見える成果を出せるとは思っていません。長期的視点に立って取り組んでいきたいですね。
めまぐるしいスピードで動き回る日々。
─ 話を冒頭の「グループ開発事業本部」に戻すと、この事業本部の発足自体が上野さんの発案だと聞きました。
上野 はい、そうなんです。現在、リバネスは国内外にグループ会社を展開しています。それぞれが独自に活動してきたわけですが、まだまだ伸びしろがあると思っていますし、逆に1つでも停滞していると、グループ全体の成長速度に影響を与えかねない。そこで、それぞれの問題点を洗い出し、グループ全体を視野に入れながら解決策を探る部門が必要だろうと考えたんです。
─ それで丸さんに進言した、と。
上野 そういうことです。
─ ちなみにそれは、何か重要な会議の場で?
上野 いえ、何かのついでの立ち話で(笑)。
─ それはまたカジュアルな(笑)。
上野 でも、いつもそんな感じなんですよ。かしこまった場で話すより、聞いてくれそうな感じがして。
─ 反応はどうだったんですか。
上野 オレもそういう部門が必要だと常々思っていたと。
─ では、すんなりGOサインが出た?
上野 いえ、最初は却下というか、少し待ってくれと言われました。話はわかるけど、今すぐでなくてもいいだろうと。
─ でも、説得したわけですね。
上野 はい、今すぐ立ち上げないとマズいことになると。それで何とか了承を取り付けて、すぐに事業本部を発足したんです。
─ プロジェクトの立ち上げも同じだと思いますが、めちゃくちゃ動きが早いですよね。
上野 それもリバネスの良さでしょうね。何かを決めてから動き出すまでのスピードが本当に早い。こんなに日々めまぐるしく動いている会社はそうはないと思います。
─ 最後に、これから仲間になる人たちへのメッセージをお願いできますか。
上野 いろいろありますけど、1つに絞るなら「国境という概念のない人」に来てほしいですね。
─ つまり、グローバルに働きたいと思っている人?
上野 いえ、そうじゃないんです。そもそもグローバルとか国際的とかいっている時点で、国境を意識しているわけですし。そうではなく、日本がどうとか、海外がどうとか、そういうこだわりがなくて、何事も地球という軸で考えることができる人。そういう人はリバネスに向いているように思いますし、そんな人たちと一緒に働きたいですね。(2021年10月15日時点)
上野裕子(うえの・ゆうこ)/博士(理学)。在学中は極限環境生物学にて生命の起源の探求を行う。2013年株式会社リバネス入社。人材開発事業部部長を経て、2018年より創業開発事業部に所属し、冊子『創業応援』の編集長、リバネスアメリカ代表に就任。自身の研究経験を活かしながら、リバネスグループが拠点を持つアメリカ、イギリス、シンガポール、マレーシア、フィリピンのディープテックスタートアップの発掘育成を行うと同時に、スタートアップと協業した日本企業の新規事業のデザインを行う。また、日本のディープテックスタートアップの東南アジア進出や、東南アジアのスタートアップの日本進出支援の経験を経て、2021年10月よりリバネスのグループ開発事業本部 本部長に就任。リバネスマレーシア取締役を兼任。
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